ミュージカル「エリザベート」:トート閣下の最後の表情は・・・
7月25日、「エリザベート」東京公演再び観劇。
一番印象に残っているのは、城田優演じるトートの最後の表情。
どこか遠くをみているようにも、途方に暮れているようにも
諦めているようにも、うちに秘めているようにもみえる、
すごく透明な表情をしていました。
「愛と死の輪舞」の、包み込むような歌声、「最後のダンス」の
情熱的な歌声。「私が踊る時」の激しさ、苛烈さ。
愛する女であっても、人間へのいら立ちを隠せないところ。
見ごたえがあったのは、古川ルドルフとのデュエットでした。
声の相性がいいのでしょう。トートとルドルフの刹那的で脆い、
けれど何らかの絆で結ばれていると思ってしまうようなハーモニー。
ダイナミックなリフトもあり、ダンスも見ごたえがありました。
トートダンサーたち、今回もとても素晴らしい動き。
蘭乃はなさんの歌声は初めて聞きましたが、裏声の豊かさはいいです。
地声との切り替えがもっと安定しているといいなと思いました。
涼風さんは厳しい声を出しているときにも、息子を愛する母親の
かわいらしさを持っていました。
少年ルドルフの「ママ、何処なの?」は、思わず泣いてしまいました。
しかし、トートと身長差すごかったな。
今回の古川雄大さんのルドルフは、何かグラグラとした怒りの青い焔を
心身にため込みながら苦しんでいる感じがよく出ていました。
ミュージカル「エリザベート」:ルキーニ、鳥を見失う
7月9日、「エリザベート」東京公演観劇。
ルキーニがエリザベートを籠の鳥に例える場面で、
おもちゃの鳥を飛ばすんですが、なんと手元に
戻ってこないというハプニングがありました。
「こんなの初めてだ」とアドリブで間を持たせながら、
鳥を懸命に探す山崎育三郎さん。
歌唱もすごいですが、舞台度胸もさすが。
井上芳雄さんの朗々とした歌声とエレガントな動き、
立ち姿も動く姿も見事でした。
少女時代から死ぬまでのシシィを声と仕草で演じ分ける、
花總まりさんの素晴らしさ。
厳しさと美しさが同居する香寿たつきさんの歌声。
妻や子をいとしく思いながらも、皇帝としての職務の追われ、
冷静に、冷酷に生きる、佐藤隆紀さんのフランツ・ヨーゼフ。
少年ルドルフの愛らしさと、トート閣下の冷たさと優しさの
入り混じった不思議なまなざし。
古川雄大さん演じるルドルフの、清冽ながら優しみのある
歌声としなやかな踊り。母エリザベートへの絶望的な告白。
鏡や鋼が絶妙に組み合わさり、さびれたような、でもなぜか
ぎらついているような、心がざわつく舞台美術。
きらびやかな衣装の宮廷人たちのあいだをうごめきまわる
トートダンサーたち。
それらすべてを采配する小池修一郎氏の熱い演出。
死を扱う舞台に満ち溢れるエネルギーに圧倒されました。